Midjourney、Stable Diffusion、DALL-E、NanoBanana——AI画像生成ツールが急速に普及し、ビジネスでの活用も当たり前になりつつあります。

しかし、「生成した画像を商用利用していいの?」「著作権はどうなるの?」という不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。

本記事では、2025年12月時点でのAI画像生成をビジネスで使う際の著作権の考え方と、トラブルを避けるための注意点を解説します。

AI生成画像の著作権は誰のもの?

現時点での法的解釈

2025年12月現在、日本の著作権法では「著作物は人間の創作的な表現である」と定義されています。

つまり、AIが自動的に生成した画像には、原則として著作権が発生しないとされています。

ただし、プロンプト(指示文)の工夫や、生成後の加工など、人間の創作的関与が認められる場合は著作権が発生する可能性があります。この点については、過去1年の判例や議論を通じて、より具体的な基準が見え始めています。

ポイント

  • AI単独で生成した画像:著作権なし(パブリックドメインに近い扱い)
  • 人間が創作的に関与した画像:著作権が発生する可能性あり(創作性の度合いによる)

ビジネス利用で注意すべき3つのリスク

リスク1:学習データに含まれる著作物の問題

AI画像生成ツールは、大量の画像データを学習して動作しています。この学習データに、著作権で保護された画像が含まれている可能性があります。

起こりうるトラブル

  • 生成画像が既存のイラストレーターの作風に酷似
  • 特定のキャラクターに似た画像が生成される
  • 写真家の作品に似た構図・色調の画像が出力される

対策

  • 有名キャラクターや実在の人物を想起させるプロンプトは避ける
  • 生成画像を画像検索で類似画像がないか確認
  • 商用利用を明確に許可しているツールを選ぶ

リスク2:各ツールの利用規約

AI画像生成ツールごとに、商用利用に関する規約が異なります。

ツール商用利用条件
Midjourney有料プラン加入が必要
DALL-E 3生成画像の所有権はユーザーに帰属
Stable Diffusionオープンソース、基本的に自由
Adobe Firefly商用利用を前提に設計
Canva AICanva Proプランで商用利用可

対策

  • 利用前に各ツールの利用規約を必ず確認
  • 規約が変更される可能性があるため、定期的にチェック
  • 重要な用途では、規約の該当部分をスクリーンショットで保存

リスク3:肖像権・パブリシティ権の侵害

AIで「実在の人物に似た画像」を生成すると、肖像権やパブリシティ権を侵害するリスクがあります。

起こりうるトラブル

  • 有名人に似た画像を広告に使用 → 肖像権侵害で訴訟
  • 実在の人物をモデルにした画像が拡散 → 名誉毀損のリスク

対策

  • 実在の人物をプロンプトに含めない
  • 生成された人物画像は、実在の人物に似ていないか確認
  • 人物画像を使う場合は、イラスト風に加工するなど工夫

ビジネスでの安全な活用方法

方法1:商用利用を前提としたツールを選ぶ

Adobe Fireflyなど、著作権的にクリアなデータのみを学習に使用していることを明言しているツールを選ぶ企業が増えています。コンプライアンスを重視するなら、こうしたツールが推奨されます。

方法2:生成画像を素材として使う

AI生成画像をそのまま最終成果物にするのではなく、デザインの「素材」や「たたき台」として使う方法です。

  • ラフデザインの段階でAI画像を活用
  • 最終的にはプロのデザイナーがオリジナル制作
  • AI画像を参考に、自社でイラストを描き起こす

方法3:社内資料など限定的な用途で使う

対外的に公開しない資料(社内プレゼン、企画書のイメージ図など)であれば、リスクは比較的低くなります。

方法4:AIと既存素材を組み合わせる

著作権がクリアなストックフォト素材と、AI生成画像を組み合わせる方法もあります。

  • 背景はAI生成、人物はストックフォト
  • AI生成画像をテクスチャや装飾として使用

社内ルール策定のポイント

AI画像生成を業務で使う場合、トラブルを防ぐために社内ルールを策定しましょう。

ルール例

  1. 使用ツールの限定:商用利用可能なツールのみ使用可
  2. 用途の限定:社内資料はOK、対外公開物は要承認
  3. プロンプトの制限:実在の人物名、ブランド名を含めない
  4. 確認プロセス:公開前に類似画像検索を実施
  5. 記録の保持:使用したプロンプトと生成画像を記録

今後の動向

AI画像生成と著作権に関する法整備は、世界的に進行中です。

日本の動き

  • 文化庁の「AIと著作権に関する考え方」に基づいた運用が定着しつつある
  • 具体的な紛争事例を通じた、実務的なガイドラインの整備が進む

海外の動き

  • EU:AI規制法(AI Act)が施行され、世界的なスタンダードになりつつある
  • 米国:AI生成物の著作権登録に関する判例が出揃い始め、基準が明確化しつつある

今後のポイント

  • 法改正や判例の動向を継続的にウォッチ
  • 業界団体のガイドラインにも注目
  • グレーゾーンでは慎重な判断を

まとめ

AI画像生成をビジネスで活用する際は、以下の点に注意しましょう。

チェックポイント確認内容
ツールの利用規約商用利用が許可されているか
学習データの透明性著作権的にクリアなデータを使用しているか
プロンプトの内容実在の人物・ブランドを含んでいないか
生成画像の類似性既存の著作物に酷似していないか
用途の妥当性社内利用か対外公開か

AI画像生成は、正しく使えばビジネスの強力な味方になります。リスクを理解した上で、安全に活用していきましょう。

法的な判断が必要な場合は、弁護士など専門家への相談をおすすめします。